私の制作のスタイルの特徴は一つの素材や物語から得たキーワードから多様な展開をしていくことにあります。ファッションをはじめとするデザイン全般を学んだ経験を生かし、糸や虫ピン、薄紙など身近で素朴な素材を用い即興性を大事にして制作しています。

 

 作品のコンセプトはその時の興味の対象によって変化していますが、リサーチのベースにはユング心理学をおいています。特にユング心理学におけるトリックスター元型はコンセプトとして重要というわけではなく、作品に向き合う姿勢、表現のスタイルに関連しています。

 

 私はトリックスターというペルソナを被り、私の私的な世界観や発想を表現しています。それは自己療養行為であるとともに、世界へと差し出す私なりの救いの形の提示でもあります。内的世界と現実世界の境界を、素材、キーワードと戯れ、「痕跡」として残しています。それは子どもの遊びのようでもありますし、心理療法でもある「箱庭療法」との関連性も伺えます。私は展示空間を箱庭に見立て、あるひとつの物語を構築しているといえるでしょう。展示空間において、私は治療者であり、クライエントでもあるわけです。そうして出来上がった作品を分析し、物語を与える。そういった私の制作のベースにあるのがユング心理学であると言えるのです。