VOICE

2017 SICF18 スパイラル奨励賞受賞作品


据え置きの電話型の録音機に30秒間メッセージを吹き込むことができる

参加型インスタレーション作品です。


 受話器を上げると直前に吹き込まれた声が流れます。


 ダイアルを回している間だけ録音をすることができます。


 吹き込みたいメッセージの長さに合わせてダイアルを回してください。(最長30秒)


 録音をすると前のメッセージは消えてしまいます。


 残るのは直前に録音したメッセージのみです。

舟山水

コラボレーションしたファッションフォトです。アートディレクションを担当しました。

撮影:三上信さん、ヘア&メイク:谷川彩霞さん、スタイリスト:hitomiさん、モデル:眞田 アンナさん。

結晶した一日

カラフルな尿素の飽和水溶液を展示内の好きなところに垂らしたり、霧吹きで噴射することでできる結晶を楽しんでいただく参加型のインスタレーションアートです。私達の平凡な日、一日を祝福するかのように華やかな色彩と刻一刻と表情を変える結晶の表情をお楽しみいただければと思います。

舟を、渡る。

 

舟とはこちら側とあちら側を繋ぐもの。古くは日本の三途の川やギリシア神話のステュクス・アケロンのように、それは現世とあの世を渡るものでもありうる。そして、舟とは目的地に至るまでの過程の状態を表している。

 舟を折る手順の中にはひっくり返すというものがあり、その作業には日常の反転/物語がくるりと入れ替わるような心地良さがある。そして、舟を折る繰り返しの作業は無心を呼び、意識は曖昧な境界を漂うように、意識と無意識の間を往復しながら進められる。意識と無意識の狭間で生まれた行為の痕跡を示したひとつの風景を提示する、箱庭遊びとして制作した。

 また、日本の庭と西洋の庭の違いの一つに、日本の庭には造形的な中心が存在しないという点がある。至るところに焦点があり、始まりもなければ終わりもなく、どの視点から見てもそこに新しい焦点が現れる。あらゆる自体は同時生起であり、ただそこに在るという状態を表現している。

Days of petals    "日々のひとひら"

 かろうじてピン一本で支えられている、小さくて薄い紙切れ一枚が私達の心と日々の儚さを象徴している。儚さ、気持ちの中の触ったら霧消するような、なんともいえない感情。もし、人々の心を昆虫のように標本にしようとしたら、このように表現できるのではないかと考えながら制作した。

 また、この紙吹雪のイメージの原型となるアイデアは桜吹雪と飛行機に乗った時に見下ろした日本の風景である。空から見たイギリスの街並が道を基準として曲線的、有機的に家々が連なっているのに対して、日本では四角く区切られた区画が街並を作る要素となり、ことに四角く区切られた田んぼや畑が、幾何学的にならぶモザイクのように美しいと感じたことが制作の動機の一つとなっている。

 

Bathtism#2

作品タイトルは「baptism」と「bath」をかけた造語になっている。これは紙吹雪を満たした風呂の断面図のイメージで制作した。薄いティッシュペーパーの一枚一枚が桜の花びらを連想させる。散っては美しく咲き誇る繰り返しから死と再生の意味を、そして日本人特有の入浴習慣もまた日本人の死生観、宗教感を表していると考える。これらの紙吹雪を用いた連作はイギリス生活の中で私が再発見した、日本人の生活に根付いた死生観、宗教観を表している。

Hokora Shelter

 この作品のモチーフは社であるとともに『子どもの頃に作ったテーブルの下の秘密基地』である。東日本大震災直後、自分の心の平静のための祈りの場所を求め、小さな祭壇や神棚のようなものを制作して行き着いたのがこの形である。またこの『社』という神様のための小さな家、祠は震災前に制作していた地蔵、道祖神信仰から着想を得た『地蔵ペニス』という作品との関連性も見受けられる。この作品は一時的な逃避、退行を通して回復するための過程を表している。

Bathtism

作品タイトルは『baptism』と『bath』をかけた造語である。この作品には入浴習慣を通した日本人の死生観と再生の強い意味を込めている。この作品を作る強い動機となったのが、渡英直後の強いホームシック、ことに「風呂が恋しい」という思いと、東日本大震災後にイギリス紙のデイリーメールで読んだ『日本人のしなやかさを示す。津波災害地域のど真ん中に共同風呂を設置』という記事である。日本人にとって風呂文化がいかに生活に置いて重要な位置を示しているのか思い知らされるとともに、表現をする上での重要なイメージとなった。

Looking for the Trickster

 自分なりのトリックスターのイメージを模索するために作られたスタジオアクション、パフォーマンスによる連作。これらはウィネバゴインディアンによるトリックスター神話群から多くの着想を得ている。

 パフォーマンスのひとつに「マッシュポテトを食べるトリックスター」というものがあるが、これは、ポール・マッカーシーによるビデオアート"making mashed poteoes"をオマージュした作品である。「ジャガイモをはじめとした作物の多くはトリックスターのペニスから生まれた」という神話からこのパフォーマンスには「トリックスターのペニスから生まれたジャガイモが再びトリックスターの身体に返る」という意味が込められている。また、このパフォーマンスに使ったマッシュポテトには色が付けられ、地蔵をモチーフにしたキャラクターの形に成形されている。これは日本の地蔵、道祖神信仰による男根崇拝との関連性から着想を得ている。